回答
自己破産手続き中、管財事件の場合は居住制限、通信の秘密の制限、資格制限を受けることになります。一方、同時廃止事件の場合は、上記のうち、資格制限のみを受けます。
解説
1.自己破産で受ける制限
自己破産をすると、一定の制限を受けることになります。制限の内容は、管財事件と同時廃止事件で異なります。
2.管財事件の場合
自己破産で、管財事件になると、破産手続き中、以下の制限を受けることになります。
2-1.居住制限
居住制限とは、居住地を離れる(引越しや長期の旅行など)場合に裁判所の許可がいる、という制限です。
2-2.通信の秘密の制限
管財事件では、破産管財人には、破産者の財産等を調査する権限が与えられています。破産手続き中は、それらの調査のため、破産者宛ての郵便物は、破産管財人に転送され、破産管財人が開封して閲覧することになります。
2-3.資格制限
破産による資格制限は、破産法には規定がなく、それぞれの資格を定めている法律によって制限されています。例えば、弁護士となる資格は、弁護士法7条5号によって、「破産者であって復権を得ない者」は弁護士となる資格を有しないと規定されています。
制限を受ける資格は、弁護士、税理士、司法書士、行政書士など士業のほか、警備員や後見人、宅地建物取扱主任者、生命保険の募集人、旅行業務取扱主任者など多種多様です。このような資格・職業制限の期間は、破産手続きの開始から、「復権」されるまで続くことになります。復権とは、権利が復活・回復することです。
復権については破産法に各定め(同法255条、256条参照)がありますが、多くの破産事件では、借金などの債務を免責する許可決定が確定したときに、復権することになります。
3.同時廃止事件の場合
同時廃止事件では、上記の制限の内、管財事件と異なり、資格制限のみ受けることになります。
居住制限は、破産手続きの開始の効果として規定されていますが(破産法37条)、同時廃止事件では、破産手続きの開始と同時に破産手続きが廃止(終了)されるため、結局、このような制限はないことになります(ただし、住所の変更等は裁判所に報告する必要があります)。
また、通信の秘密の制限は、破産管財人の権限として認められており(同法81条、82条)、同時廃止事件では、破産管財人が選任されないため、この権限が行使されることもありません。