1.定義
財団債権とは、破産手続によらないで、破産者の財産(破産財団)から、随時、優先的に、弁済を受けられる債権をいいます。
2.解説
[財団債権の効果]
破産手続開始決定が出されると、通常の債権は、個別の取立てができなくなり、破産手続にしたがい、配当によって弁済を受けることになります。これに対して、財団債権は、破産手続によらないで、破産財団から個別に取立て、弁済を受けることができるのです。
[財団債権の例]
どのような債権が財団債権になるかは、破産法148条以下に規定があります。 例えば、以下の債権が財団債権となります。
・破産手続開始決定の公告の費用
・債権者集会にかかる費用 (以上、同条1号「破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権」)
・破産管財人の報酬
・否認権行使にかかる費用
・売掛債権の回収費用
・配当準備のための資料作成費用 (以上、同条2号「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」)
・所得税や地方税及び各種社会保険料 (以上、同条3号「破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税の請求権」)
・破産会社の従業員の給与等
[破産会社の従業員の給料等]
破産会社の従業員の給料等についても、一定の範囲で財団債権となります。
具体的には、破産手続開始前3か月間の給料の請求権は、財団債権となります(破産法149条1項)。
また、破産手続の終了前に退職した破産会社の従業員の退職金の請求権は、退職前3か月分の給料の総額に相当する額について財団債権となります(破産法149条2項)。
3.参考条文
(破産法)
○第2条7項
この法律において、「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。
○第151条
財団債権は、破産債権に先立って、弁済する。