法人破産(会社破産)する場合、取締役会又は取締役の決議が必要です。株主総会の決議は必要ありませんが、取締役会を設置しない株式会社の場合は、取締役の決議の代わりに株主総会で決議することも可能です。
目次
1.法人・会社破産と株主総会決議
株主総会は、会社の重要な意思決定を行う機関です(会社法295条参照)。しかし、法人破産(会社破産)の申立てを行うかどうかの意思決定においては、株主総会の決議は不要とされています。これは、破産の意思決定を迅速に行う必要があることや、株式市場の混乱を防ぐためです。
2.法人・会社破産と取締役会決議
株主総会決議が不要とはいえ、破産の申立てを行うかどうかは、会社にとって重大な事柄であるため、株主総会によって選任された取締役が、破産の申立てを行うか否かの決定を行います。
株式会社には、取締役会という機関を設置している会社と、設置していない会社があります。取締役会設置の有無により、決議を行う方法が異なります。なお、取締役会を設置している場合、定款又は登記簿謄本にその旨の記載があります。記載がない場合は、設置していない会社です。
2-1.取締役会設置会社の場合
取締役会設置会社の場合、破産申立ての決議を行うことができるのは、取締役会です。
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行うものとされています(会社法369条1項)。この要件を満たしていれば、取締役全員が賛成していなくても決議は有効に成立します。
2-2.取締役会を置かない会社の場合
取締役会を置かない会社の場合、破産申立ての決議を行うことができるのは、取締役です。なお、取締役会を置かない会社の場合、株主総会も破産申立ての決議を行うことができます。
①取締役が一人の場合
取締役が一人の場合、当該取締役(代表取締役)が単独で決定することができます(会社法348条1項)。
②取締役が複数の場合
取締役が2人以上いる場合には、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定します(会社法348条2項)。
3.準自己破産の手続き
会社が破産状態であるにもかかわらず、取締役会(又は取締役)により破産申立ての決議が否決された場合であっても、取締役には単独で破産の申立てを行う権限があります。これを準自己破産(破産法19条1項2号)といいます。
準自己破産の申立てを行う場合は、申立人となる取締役が裁判所の予納金や弁護士費用を負担する必要があります。
参考条文
破産法
(法人の破産手続開始の申立て)
第十九条 次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
一 一般社団法人又は一般財団法人 理事
二 株式会社又は相互会社(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第五項に規定する相互会社をいう。第百五十条第六項第三号において同じ。) 取締役
三 合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員
2 前項各号に掲げる法人については、清算人も、破産手続開始の申立てをすることができる。
3 前二項の規定により第一項各号に掲げる法人について破産手続開始の申立てをする場合には、理事、取締役、業務を執行する社員又は清算人の全員が破産手続開始の申立てをするときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
4 前三項の規定は、第一項各号に掲げる法人以外の法人について準用する。
5 法人については、その解散後であっても、残余財産の引渡し又は分配が終了するまでの間は、破産手続開始の申立てをすることができる。
- 法人破産についてさらに詳しく知りたい方は、「法人破産のよくあるご質問」をご覧ください。
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