回答
住宅を残したまま借金を整理する方法には、一般的には任意整理と個人再生(住宅ローン特則)があります。
任意整理は、裁判所を介さない手続ですので、対象とする債権者を選択することができ、住宅ローンや自動車ローン以外の借金だけを対象とすることもできます。しかし、原則として借金自体を減額することは困難ですので、住宅ローンや自動車ローンに加えて他の借金もすべて支払う必要があります。
一方、個人再生(住宅ローン特則)は、住宅を残したまま、住宅ローン以外の借金自体を大幅に減額することができます。しかし、法律上の要件があり、利用できない場合もあります。また、自動車ローン等の一部の債権者を除外することもできません。
それぞれメリットとデメリットがありますので、弁護士とよく相談し、手続を選択する必要があります。
解説
1.借金整理の方法
債務整理の方法には、一般的に、自己破産、個人再生、任意整理があります。
このうち、自己破産は一定額以上の財産を全て処分して、残りの借金を免除(免責)してもらう手続であるため、住宅も原則として処分することになります。したがって、任意整理と個人再生について、以下解説します。
2.任意整理の場合
任意整理は、弁護士が債権者と交渉し、毎月の返済額を減額する分割払いの和解をする手続です。通常、将来利息もカットされます。
任意整理は対象とする債権者を選択することができるため、住宅ローン債権者を対象から外すことで、住宅への影響を避けることができます。また、自動車ローンの返済中の自動車は、個人再生・自己破産の場合には債権者に返還しなければならないことがありますが、任意整理の場合は、自動車ローン債権者を対象から外すことで、自動車ローンを支払い続け、自動車を残すことができます。
ただし、任意整理は原則として借金自体を減額することは困難ですので、住宅ローンに加えて、他の借金を毎月支払っていく必要があります。また、あくまで任意の話し合いによるものですので、債権者が同意しなければ、分割払いの和解をすることはできません。
このことから、任意整理を選択できるのは、住宅ローンに加えて、任意整理した他の借金を毎月支払っていくことができる方、ということになります。なお、他の借金については、通常、法律上の元金、和解時までの利息、遅延損害金の合計額を、3年から5年に分割(36回から60回)して支払うことになります。
3.個人再生(住宅ローン特則)の場合
個人再生は、借金などの返済ができなくなった人が、全債権者に対する返済総額の一部を原則3年間で分割して返済する再生計画を立て、債権者の意見を聞いたうえで裁判所が認めれば、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務(養育費・税金など一部の債務を除く)などが免除されるという手続です。
再生計画に住宅資金特別条項を定めることによって、個人再生による借金の減額という利益を受けつつ、住宅ローンはそのまま払い続け、住宅を残すことができます。
ただし、次のようなデメリットがあります。
・個人再生をした事実が官報に掲載される
・自動車ローン返済中の自動車を返還しなければならない場合がある
・裁判所が個人再生委員を選任した場合、裁判所に納める予納金が必要になる
自動車ローン返済中の自動車が引き揚げられる、官報に掲載される等の個人再生のデメリットに問題がない方については、個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の利用を検討すべきといえます。
住宅ローン特則について詳しくは債務整理コラム「個人再生で住宅は残せるの?」をご参照ください。
この制度の利用にはいくつかの条件があるものの、自宅を処分せずに借金を大幅に減額できるという点において、経済的メリットが大きいものといえます。