回答
小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは、主に①利用できる方の収入の安定性の要否、②再生計画の返済総額、③債権者の(消極的)同意の要否、の3点にあります。
一般的には小規模個人再生を選択することが多いです。再生計画の返済総額が少ないこと、収入の安定性(収入の変動が少ないこと)という利用条件が不要であることが理由です。
ただし、小規模個人再生は債権者の(消極的)同意が必要となりますので、大口の債権者が再生計画案に反対する意向である場合、再生計画案が否決されることになります。この場合、給与所得者等再生を検討することになります。
解説
1.手続の種類について
個人再生手続には、小規模個人再生と、給与所得者等再生の2種類があります。
2.小規模個人再生
小規模個人再生は、個人の方全般を対象とした民事再生手続です。
小規模個人再生を利用するためには、①住宅ローンを除いた借金などの総額が5000万円以下で、②将来の継続的な収入の見込みがあること等が要件となります。
3.給与所得者等再生
給与所得者等再生は、主に会社員等を対象とした民事再生手続です。
給与所得者等再生を利用できるのは、小規模個人再生を利用できる方(前述の①と②の条件を満たす方)のうち、給与等の定期的な収入があり、かつその額の変動が小さいと見込まれる方です。
4.小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
4-1.収入の安定性の要否
給与所得者等再生は、小規模個人再生を利用できる条件を満たした上で、さらに安定した給与等の収入があることが必要とされています。すなわち、前述のとおり給与等の定期的な収入があり、かつその額の変動が小さいと見込まれる方でないと、利用することができません。
なお、収入の変動幅が小さいとは、過去2年間の年収ベースでの収入の変動が概ね20%程度であることが、目安とされています。
4-2.支払額(減額される借金の額)が異なる
小規模個人再生では、清算価値又は最低弁済額のいずれか高い方の金額を返済する必要があります。最低弁済額は、負債の総額に応じて定められています。
これに対して、給与所得者等再生では、①清算価値、②最低弁済額、③可処分所得2年分のうち、一番高い金額を返済する必要があります。
可処分所得とは、所得から、一定の計算式に従って算出される最低限の生活費等を差し引いた金額であり、その2年分が返済金額となります。この生活費等は、生活保護を基準にした金額であるため、給与収入が多い方は、可処分所得が多くなります。
多くの場合、最低弁済額より可処分所得2年分の方が高くなりますので、給与所得者等再生の返済総額は、小規模個人再生の返済総額より高額になることが多いです。
4-3.債権者の同意の要否
小規模個人再生手続では、再生計画案に同意しない債権者が頭数の半数に満たず、かつ、同意しない債権者の債権額が債権総額の2分の1を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなされます。
例えば、債権者が10社で債務総額が1000万円の場合、5社が反対した場合又は反対する債権者の債権総額が500万円を超えた場合、再生計画案は否決となります。
一方、給与所得者等再生では、このような同意は必要とされていません。
5.選択の基準
小規模個人再生を利用できる場合は、小規模個人再生を選択するのが一般的です。なぜなら、小規模個人再生の方が再生計画の返済総額が少なく、収入の安定性の要件も不要であるからです。
ただし、小規模個人再生は、再生計画案に対して、前述のとおり債権者の消極的な同意(異議が出ないこと)が必要です。そのため、大口の債権者からの異議が見込まれる場合等は、給与所得者等再生を検討するのがよいでしょう。