回答
個人再生をしても減額されない借金(債務)には、①共益債権、一般優先債権と、②非減免債権があります。
①の例としては、個人再生の手続費用や税金、社会保険料等があり、これらの債権は個人再生にかかわらず随時支払いを行う必要があります。また、②の例として、不法行為に基づく損害賠償債務や婚姻費用、養育費等があります。
解説
個人再生は、借金などの債務を原則5分の1支払い、残りを免除してもらう手続です。しかし、共益債権、一般優先債権及び非免責債権については、個人再生をしても減額されることはありません。
1.共益債権、一般優先債権
共益債権、一般優先債権は、そもそも個人再生手続の対象とはなりませんので、再生手続にかかわらず、随時支払いを行う必要があります。
1-1.共益債権
共益債権とは、再生手続の利害関係人の共同の利益のための行為によって生じた債権のことで、個人再生手続に必要な裁判費用や再生債務者の事業継続により生じた請求権などがあります。
1-2. 一般優先債権
一般優先債権には、税金や社会保険料、人を雇っている場合の給料、罰金などがあります。
2.非減免債権
民事再生法では、229条3項、244条などで非減免債権を定めています。非減免債権には、次のもの等があります。
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意または重過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 夫婦や扶養家族の生活費、子の養育費などの請求権
非減免債権は、前述の共益債権、一般優先債権と異なり、個人再生の手続の対象となります。したがって、減額されないものの、貸金業者からの借金等と同様に、債権者一覧表に記載し、再生債権として裁判所に届出を行います。
これらの債務について、再生手続中、また、再生計画に従い分割弁済している間に、直ちに弁済しないといけないとすると、再生計画の遂行に支障が生じます。
そこで、民事再生法は、再生計画に従い分割弁済している間は、非減免債権についても、再生計画と同じ一般的な基準に従って弁済すれば足りるとしています(民事再生法232条4項、244条)。これは例えば、借金が5分の1になる場合は、再生計画に従った分割弁済中は、非減免債権も5分の1だけ支払っていればいいことになります。
ただし、再生計画に従った分割弁済の期間満了時に、残額を一括で支払わなければなりません(民事再生法232条4項、244条)。そのため、再生計画に従った分割弁済中に資金計画を立てておく必要があります。
参考条文
(民事再生法)
第二百二十九条 小規模個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権の弁済の時期若しくは第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を除き、再生債権者の間では平等でなければならない。
2 再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予については、前項の規定により別段の定めをする場合を除き、次に定めるところによらなければならない。
一 弁済期が三月に一回以上到来する分割払の方法によること。
二 最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
3 第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
一 再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二 再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
第二百四十四条 第二百二十一条第三項から第五項まで、第二百二十二条から第二百二十九条まで、第二百三十二条から第二百三十五条まで及び第二百三十七条第二項の規定は、給与所得者等再生について準用する。