自己破産を検討されている方で、保険に加入されている方も多いと思います。
・自己破産したら保険を解約しなくてはならない?
・たくさん保険に入っている場合はどうなるの?
・加入中の保険会社から契約者貸付を受けている場合はどうなるの?
・子どもの学資保険はどうなるの?
・自己破産したら保険に入れなくなる?
このようなお悩み、自己破産でよくある保険の質問をまとめてみました。
保険は、解約返戻金相当額が資産・財産とみなされます
一言、「保険」といっても、生命保険、火災保険、地震保険、傷害保険、自動車保険、学資保険・・・保険の種類は多種多様です。
生命保険1つとっても、死亡保険や医療保険、がん保険、個人年金保険など、保証内容は様々です。
これら1つ1つの保険について、自己破産手続きにおいてどのように扱われるのか、事細かに解説することはできませんが、共通していることは、保険は、自己破産手続きでは、解約返戻金相当が資産・財産とみなされるということです。
実際に保険を解約しなくても、保険会社で解約返戻金の試算を算出してもらえます。自己破産の際は、保険会社の発行する解約返戻金額証明書等を、証拠資料として裁判所に提出します。
また、このことから導かれる帰結として、解約返戻金がないタイプ・掛け捨てタイプの保険は、資産・財産とみられないので、自己破産による影響はないのが通常です。
保険に複数加入している場合
先ほど述べたように、保険の種類は多種多様で、自己破産される方が、複数の保険に加入されている場合も多くあります。
このような場合、各保険の解約返戻金相当額算出し、それを合算して、破産される方の保有資産・財産を計算します。
自己破産では、総額99万円までの財産であれば、処分等する必要がありません。すべての保険の解約返戻金相当額と、その他お手持ちの財産が併せて99万円以下であれば、保険を処分・解約等する必要がありません。ただし、解約返戻金額によっては、自由財産の拡張申立てが必要など、一定の手続きを経る必要がある場合があります(名古屋地方裁判所による運用です)。
自己破産と保険契約者貸付
保険会社による保険契約者への貸付(契約者貸付などと呼ばれています)を受けられている方の場合、通常、解約返戻金の範囲内で、このような貸付が行われます。
そして、貸付を受けられている方が保険を解約する場合、解約返戻金から貸付残金などを控除した金額が、保険契約者に支払われます。
自己破産の場合も同様に、自己破産時点で実際に受け取り可能な解約返戻金相当(解約返戻金額から貸付残金などを控除した受取可能額)が、資産・財産とみなされます。
自己破産と学資保険
学資保険は、子どもの保険だから、子どもの財産だと誤解されている方もいるかもしれません。
ですが、学資保険は、親などの保護者が保険契約者となり、お子様を被保険者として、保険契約者が保険料を支払っているというのが一般的です。
自己破産では、保険契約者、保険料を負担している方の財産として扱われます。
自己破産と保険の新規加入
自己破産したら、保険に入れなくなるということはありません。
借金の返済で家計が苦しく、保険に入る余裕がなかった、保険を解約してしまったという方も、自己破産によって借金を0にし、家計が改善されたからと、万一の事故や病気に備え、新たに保険に加入される方もとても多いです。
(文責:弁護士若井)
なお、本コラムは作成日現在の関連法規及び実務等を基礎とした一般的な見解ではありますが、裁判所の運用・見解を保証するものではありません。実際の手続きについては必ず弁護士にご相談ください。