個人再生は、債務者にとって大変心強い制度ですが、必ずうまくいくというわけではありません。個人再生が失敗するということは可能性としてあり得ます。
ここでは、個人再生の失敗についてご説明いたします。
個人再生の失敗とは
個人再生の失敗には、典型的なものとして二つの場合があります。
一つ目は、再生計画案が認められない場合です。
二つ目は、再生計画通りに返済できなかった場合です。
どちらの場合にせよ、失敗した場合は、また債務整理を行わなければなりません。
個人再生の失敗を避けるためには、現状と将来を十分に予測した上で、実現可能な再生計画案を立てることがとても大切です。
再生計画案が認められるための要件・ルール
再生計画案は、裁判所が認可するか否かの判断を下します。
裁判所が再生計画案を認可しない場合が、先ほど挙げた一つ目の失敗になります。
そこで、再生計画案が認可されるための要件・ルールについてみていきましょう。
ルール1:清算価値保証原則
まず、再生計画案のルールとして、清算価値保障原則という原則を守る必要があります。
これは、再生計画による弁済額が、債務者が破産した場合の予想配当額より上回っていることをいいます。債務者は今現在持っている財産の総額以上は、必ず弁済しなければならないということで、簡単に言うと、破産する場合より、多くの返済をしなければならないということです。
このルールは、債権者の利益を守るためにあります。債権者の立場に立つと、債務者が破産するよりは、多くの返済が受けられるということになります。このように債権者を最低限守ることで、債権者が個人再生に協力してくれる可能性が高まります。
ルール2:最低弁済基準額
次に、再生計画が認可されるためには、最低弁済基準額を満たしていることも必要となってきます。これは、個人再生するにあたって、最低限返済しなければならない金額があるということです。
具体的にいくら返済しなければならないかは、つぎのとおり、借金の総額によって決まっています。
借金総額が100万円未満 → 借金総額
100万円以上~500万円以下 → 100万円
500万円以上~1500万円以下 → 20%
1500万円以上~3000万円以下 → 300万円
3000万円以上~5000万円以下 → 10%
ルール3:再生計画案の履行の可能性
裁判所に提出された再生計画案は、履行の可能性を判断されることとなります。履行可能性とは、再生計画案に従った返済が可能であることです。
これがないと、開始決定や債権者の同意を得るための付議決定、さらには認可決定がされません。
履行の可能性を明らかにするために、給与明細や源泉徴収票、家計などを提出していきますが、裁判所によっては、再生手続き期間中に、履行テスト(再生計画案に従った返済のシミュレーション)を実施しているところもあります。
ルール4-1:【小規模個人再生の場合】債権者の同意
小規模個人再生の場合は、債権者の半数及び、債権総額の半数以上の同意が得る必要があります。ここでいう同意は、消極的な同意、つまり、積極的に反対する債権者が、過半数及び過半額いなければいいことを意味します(民事再生法230条6項)。
※反対が見込まれる場合には、債権者の同意が必要ない給与所得者等再生を検討していくことになります。ただ、一般的に、総返済額はこちらの方が多くなりますので、原則としては、小規模個人再生で手続きを進めていくことになります。
ルール4-2:【給与所得者等再生の場合】可処分所得
給与所得者等再生では、清算価値保障原則と最低弁済基準額の要件に加えて、可処分所得要件も加わります。個人再生するにあたって、可処分所得の2年分以上は、最低限返済しなければならないというルールです。
可処分所得とは手取り収入から最低限度の生活をするために必要な費用を差し引いた額をいいます。
ルール5:返済期間
再生計画案では、原則3年(最大5年)で返済する計画を立てる必要があります。
個人再生では、以上のようなルールを守り、実現可能な再生計画案を立て、裁判所にそれを認めてもらう必要があります。
詳しくは、債務整理の実績を多数有する当事務所の弁護士にご相談ください。
◆文責 弁護士 若井 加弥子
なお、本コラムは作成日現在の関連法規及び実務等を基礎とした一般的な見解ではありますが、裁判所の運用・見解を保証するものではありません。実際の手続きについては必ず弁護士にご相談ください。