自己破産をする場合に気をつけるべきことの一つに、資格制限があります。そもそも、資格制限とはどのような制限なのでしょうか?
以下では、自己破産と資格制限の関係、自己破産をした場合に制限を受ける期間、資格制限に該当する職業の場合にとりうる選択肢について、中部法律事務所の弁護士が解説します。
1.自己破産による資格制限とは
自己破産をした場合、一定の資格においてはそれを利用した仕事ができなくなります。
これには①公法上のものと②私法上のものがあります。
1-1.公法上の資格制限
①の公法上の資格制限の主なものとして、弁護士・司法書士といった士業、古物商、警備員、生命保険募集員及び損害保険代理人、証券外務員、旅行業務取扱管理者、宅地建物取引主任者、建設業者等が挙げられます。
1-2.私法上の資格制限
②の私法上の資格制限の例としては、代理人、後見人、遺言執行者等が挙げられます。
また、取締役が破産手続開始決定を受けると、会社との委任関係が終了するため、その結果として、取締役の地位を失うことになります。ただし、この場合は、資格制限を受けるわけではないので、自己破産の手続中であっても、株主総会でふたたび取締役として選任されれば、またその地位に戻ることができます。
2.資格制限を受ける期間
資格制限の場合は、破産手続が終了したとしてもそれだけで制限がなくなるわけではなく、復権するまで続きます。
復権とは権利を回復することです。具体的には、免責許可決定が確定した時点を指します(破産法255条1項1号)。
免責許可の申立ては、自己破産の申立てと同時に行いますから、実際には自己破産の手続がすべて終了すれば、復権すると考えてよいでしょう。
したがって、資格制限を受けている期間は、数か月といえます。
また、仮に、免責が不許可になった場合でも、詐欺破産罪(破産法265条)について有罪の確定判決を受けることなく破産手続開始から10年経過したときにも復権の効果が生じるほか(破産法255条1項4号)、債務をすべて弁済し消滅させれば、裁判所に復権を申し立てることが出来ます(破産法256条)。
3.自己破産できない職業の場合
資格制限を受ける期間が数か月といえども、その間、その仕事ができないと困る場合もあるでしょうし、資格制限を受けることによって、周囲に自己破産のことが知られてしまい、今後仕事を続けていくことが困難になる場合もあるでしょう。
そのような場合は、現実的には、自己破産の方法がとれないことになります。
そういった場合は、個人再生等の債務整理の方法をとることとなります。
債務整理の方法は、いろいろありますから、自己破産ができないと早々に諦めずに、まずは、弁護士に相談なさることをおすすめいたします。