借金がかさんでくると、ついついヤミ金業者に手を出してしまうことがあります。
また、自分でもヤミ金と気づかないまま、借り入れをしてしまうケースもあります。
万一ヤミ金から借り入れをしてしまったら、どのような対応をすればよいのでしょうか?
今回は、ヤミ金業者からの借り入れの返済義務と、ヤミ金から借入をしてしまった場合の対処方法について、弁護士が解説します。
1.ヤミ金とは
そもそも、ヤミ金とはどういった金融業者なのか、理解しておきましょう。
ヤミ金は、貸金業の登録をせずに金融業を営む業者です。
法律では、業として金銭の貸付を行うときには、貸金業の登録をしなければならない、とされています(貸金業法3条1項、11条)。
しかし、こうした登録をせずに、無断で貸金業をしている業者が、ヤミ金です。
ヤミ金は、法律を守らないので、利息制限法による利率の上限を超えて、高利率で貸付をします。
よくあるのがトイチやトサン、トゴなどという利率で、10日で1割、10日で3割、10日で5割などの利息が付きます。
また、貸金業法による取り立て規制にも従わないので、違法な手段で厳しい取り立てをします。平気で深夜にしつこく電話をかけ続けたり、家族を脅迫したり、勤務先に電話をかけたりなどの嫌がらせをすることが多いです。
2.ヤミ金からの借り入れは、返済義務がない
ヤミ金から借入をしてしまったら、利息があまりに高いために、返済ができなくなってしまうことが多いです。
ただ、返済をしないと、自宅や勤務先などにしつこく嫌がらせの電話がかかってきたり、家族を脅されたりするので、仕方なく払っている、というケースが多いでしょう。
しかし、実は、ヤミ金からの借り入れについては、法律上返済義務がないと考えられています。それは、ヤミ金からの借金が「不法原因給付」に該当するからです(民法708条)。
不法原因給付とは、「違法な原因でお金を給付した人は、そのお金の返還請求をすることができない」、という決まりです。「法律は、違法なことに手を貸さない」という考え方にもとづいています。
たとえば、愛人契約によってお金を渡していた場合、別れたからといって「お金を返してほしい」と言っても、返してもらうことはできません。
本来なら、愛人関係がなくなった以上、お金を返さないといけないのですが、愛人契約自身が不法な契約なので、それにもとづいて交付した現金を返す必要がないのです。
ヤミ金の場合にも、これと同じことが言えます。
ヤミ金は、貸金業登録もせずに、違法に営業をしている上、金利も暴利で違法性が極めて高い業者です。
このような違法業者による貸付金は、金利だけではなく元本も返還請求する権利がないと考えられています。
最高裁判所も、「著しく高い金利によって、違法な方法で貸し付けをした金融業者に対しては、利息だけではなく、元金部分も含めて、全額について損害賠償請求ができる」と判断されています(最判平成20年6月11日)。
つまり、ヤミ金から借りたお金については、元本も含めて返済しなくて良い上に、支払ってしまった場合には、元本も含めて損害賠償請求ができるということになります。
3.ヤミ金に対し、「返済義務がないから返さない」と言っても、通用しない
このような最高裁の判決の趣旨からすると、ヤミ金から返済の督促があっても、返済しなくて良さそうなものです。
債務者が自分でヤミ金に対し「法的に返済義務がないから、返しません」と言ったら、返さなくて良くなるのでしょうか?
実際には、それは難しいです。ヤミ金は、自分たちが違法業者であることは重々承知しているので、今更「不法原因給付」などと言われても、「それはわかっている」ということになってしまいます。その上で、嫌がらせを繰り返して、無理矢理払わせようとしているのです。
そこで、債務者が自分で「法的に支払い義務がない」と言っても、通常は「それがどうした」ということになってしまい、支払い請求も嫌がらせも止みませんし、嫌がらせがエスカレートするおそれもあります。
4.警察に相談する
闇金被害に遭ったときの対処方法の1つ目としては、警察に相談することです。
5.弁護士に相談する
警察にヤミ金相談に行っても、動いてもらえないことがよくあります。
そのようなときには、弁護士に相談しましょう。弁護士からの連絡でヤミ金からの取り立てが収まることが多いです。それでも収まらず相手がしつこい場合には、刑事告訴をして警察を動かし、ヤミ金に諦めさせることも可能です。
弁護士に依頼した場合、ヤミ金への返済が必要になることはありません。また、ヤミ金に対して、過払金等の返還請求をしたり、ヤミ金の銀行口座を差し押さえてヤミ金から強制的に返還を受けることもあります。
ヤミ金被害に遭っていると、精神的に追い込まれて、仕事も家族も失うことがあります。そのようなことになる前に、早めに弁護士や警察に相談に行きましょう。